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専任技術者ってどんな資格?まるわかりガイド

建設業の許可を考えたときに、専任技術者の配置が一つのハードルになります。営業所には必ず専任技術者を置かなければなりません。また、建設業の許可について、許可を受ける時にクリアすべき条件は許可取得後も維持しなければなりません。

条件の維持がでないと、許可の取り消し事由に該当します。したがって、専任技術者についても許可を維持するためには常に配置する必要があります。専任技術者に関する要件は、人に関する要件です。該当する人がいなくなったからといって、すぐに募集・採用できるとは限りません。

退職や異動などで思わぬ事態が生じたときにも対応できるように、本稿で専任技術者に関する要件を確認して担当者はしっかりと計画を立てるようにしてください。

1.専任技術者

専任技術者とは

営業所には専任技術者を必ず置かなければなりません。各営業所への配置が求められています。営業所に専属で常勤として従事する必要があります。専任技術者とはどのような役割があるのでしょうか。

専任技術者の仕事は主に営業所の中で行われます。具体的には、発注者と技術的な内容の交渉を行って、工事の見積書を作成し契約を締結します。技術者としての裏付けをもって発注者との契約に関する交渉を行うことが主な仕事です。

このため、ほかの営業所や他の会社との掛け持ちの状態は認められません。発注者に技術的な交渉や見積もりについての相談が生じた場合に営業所に専属で従事していなければ対応できず、取引をスムーズに行うことができないからです。

2.技術者としての要件

一般建設業の場合は、次のAからCのいずれかの要件に合致する必要がります。

A 学歴と実務経験の要件

該当する業種に関して、指定された学科を卒業し3年または5年の実務経験を有すること。(大学を卒業した場合は3年間。高校を卒業の場合は5年間になります。)

指定の学科とは、建築業法や施行令に定められています。具体的には15の業種の区分に応じて次の学科が指定されています。

1土木工事業、舗装工事業
土木工学(土木工学、農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科)、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科
2建築工事業 大工工事業 ガラス工事業 内装仕上工事業
建築学又は都市工学に関する学科
3左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ ブロック工事業 塗装工事業
土木工学又は建築学に関する学科
4電気工事業 電気通信工事業
電気工学又は電気通信工学に関する学科
5管工事業 水道施設工事業 清掃施設工事業
土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科
6鋼構造物工事業 鉄筋工事業
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
7しゅんせつ工事業
土木工学又は機械工学に関する学科
8板金工事業
建築学又は機械工学に関する学科
9防水工事業
土木工学又は建築学に関する学科
10機械器具設置工事業 消防施設工事業
建築学、機械工学又は電気工学に関する学科
11熱絶縁工事業
土木工学、建築学又は機械工学に関する学科
12造園工事業
土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科
13さく井工事業
土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科
14建具工事業
建築学又は機械工学に関する学科
15解体工事業
土木工学又は建築学に関する学科

B 実務経験のみの要件

該当する業種に関する10年以上の実務経験を有していることが要件とされています。複数業種を証明する場合には期間の重複した証明は認められませんので注意してください。
実務経験については、次の方法により確認します。

・実務経験の内容が合致することの確認

証明者が許可を有している場合には、その旨を記載した上で許可書と変更届けの写しが必要です。証明者が許可を有しない場合は、業種の内容を証明する書類が必要になります。業種の内容が明確にわかる工事請負契約書、工事請負書、注文書、請求書等です。これは従事期間の全部についての資料が必要です。また、原本の提示が必須となっています。

・実務経験を証明する期間について常勤性の確認

常勤性の確認については、従事していた会社の名前の入った健康保険者証で行うことができます。ただし、これは引き続き在籍している場合に限ります。また、資格取得年月日と事業所名の記載があることが必要です。引き続き在籍していない会社での実務経験を証明する場合には、証明者の押印がある申請書類に加えて年金記録の照会回答表や確定申告書が必要になります。

C 資格に関する要件

該当する業種に関する指定の資格を有していることが要件とされています。
29の業種ごとに下記に記載した資格を保有していることが確認できればよいこととされています。該当する資格について、国家資格者等の場合は合格書または免許書の写しが必要です。

1土木一式工事業
技術士試験 森林土木、水産土木、農業土木、鋼構造及びコンクリート、一級建設機械施工技士、二級建設機械施工技士、一級土木施工管理技士、二級土木施工管理技士(土木)
2建築一式工事業
一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(建築)
3大工工事業
技能検定 型枠施行、建築大工、一級建築士、二級建築士、木造建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ、躯体)
4左官工事業
技能検定 左官、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
5とび・土工工事業
技能検定 とび・とび工・コンクリート圧送施工、型枠施行、ウェルポイント施行、技術士試験 森林土木、水産土木、農業土木、鋼構造及びコンクリート、建設、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(躯体)、二級土木施工管理技士(薬液注入、土木)、一級土木施工管理技士、一級建設機械施工技士、二級建設機械施工技士
6石工事業
技能検定 石工・石材施工・石積み、ブロック建築・ブロック建築工・コンクリート積みブロック施工、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)、一級土木施工管理技士、二級土木施工管理技士(土木)
7屋根工事業
技能検定 かわらぶき・スレート施工、板金 (選択科目 「建築板金作業」 ) ・建築板金 (選択科目「内外装板金作業」)、板金工(選択科目「建築板金作業」 )、建築板金(選択科目「ダクト板金作業」 )、一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
8電気工事業
一級計装士、建築設備士、第一種電気工事士、第二種電気工事士、技術士試験 電気電子、鋼構造及びコンクリート、建設、一級電気工事施工管理技士、二級電気工事施工管理技士
9管工事業
技能検定 建築板金(選択科目「ダクト板金作業」 )、配管(選択科目「建築配管作業」 ) ・配管工、給排水衛生設備配管、空気調和設備配管・冷凍空気調和機器施工、給水装置工事主任技術者、一級計装士、建築設備士、技術士試験 廃棄物管理または汚物処理、水質管理、衛生工学、上水道及び工業用水道、上下水道、流体工学または熱工学、一級管工事施工管理技士、二級管工事施工管理技士
10タイル・レンガ工事業
技能検定 ブロック建築・ブロック建築工・コンクリート積みブロック施工、築炉・築炉工・れんが積み、タイル張り・タイル張り工、一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ、躯体)、一級建築施工管理技士
11鋼構造物工事業
技能検定 鉄工選択科目 (製罐作業・構造物鉄工・製罐)、技術士試験 鋼構造及びコンクリート、一級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(解体)、二級土木施工管理技士(土木)、一級土木施工管理技士
12鉄筋工事業
技能検定 建築板金(選択科目「ダクト板金作業」)、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(解体)
13舗装工事業
技能士試験 鋼構造及びコンクリート、建設、一級建設機械施工技士、二級建設機械施工技士、二級土木施工管理技士(土木)、一級土木施工管理技士
14しゅんせつ工事業
技能士試験 水産土木、二級土木施工管理技士(土木)、一級土木施工管理技士
15板金工事業
技能検定 板金(選択科目「建築板金作業」) ・建築板金 (選択科目 「内外装板金作業」)・板金工(選択科目「建築板金作業」)、工場板金、鉄筋組立て・鉄筋施工、建築板金(選択科目「ダクト板金作業」 )、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
16ガラス工事業
技能検定 かわらぶき・スレート施工、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
17塗装工事業
技能検定 噴霧塗装、金属塗装・金属塗装工、建築塗装・建築塗装工、塗装・木工塗装・木工塗装工、路面標示施工、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)、二級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)、一級土木施工管理技士
18防水工事業
技能検定 造園、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
19内装仕上工事業
技能検定 表具・表具工・表装・内装仕上げ施工・カーテン施工・天井仕上げ施工・床仕上げ施工、畳製作・畳工、一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
20機械器具設置工事業
技能士試験 機械「流体工学」又は「熱工学」、機械
21熱絶縁工事業
技能検定 熱絶縁施工、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
22電気通信工事業
電気通信主任技術者、技術士試験 電気電子
23造園工事業
技能検定 造園、技術士試験 森林土木、林業、鋼構造及びコンクリート、建設、一級造園施工管理技士、二級造園施工管理技士
24さく井工事業
技能検定 さく井、すべり防止工事士、技術士試験 上水道及び工業用水道
25建具工事業
技能検定 建具製作・建具工・木工(選択科目「建具製作作業」)・カーテンウォール施工サッシ施工、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上げ)
26水道施設工事業
技術士試験 廃棄物管理、汚物処理、水質管理、上水道及び工業用水道、上下水道、二級土木施工管理技士(土木)、一級土木施工管理技士
27消防施設工事業
乙種消防設備士、甲種消防設備士、
28清掃施設工事業
技術士試験 廃棄物管理、汚物処理
29解体工事業
技術検定 技術試験

3.専任性と技術要件の確認

専任技術者の専任性の確認

専任技術者については、その名称からもわかるとおり専任性が求められています。営業所の休日を除き、基本的には営業している間は常に勤務していなければなりません。発注者からの技術的相談や、見積もりについて問い合わせがあった時に対応する必要があるからです。

具体的には専任性をどのように確認するのでしょうか。

まず、専任技術者の住所が営業所からあまりにも遠いと毎日勤務することが難しくなります。このため、通勤が不可能な場所に住所があると専任性が確認できません。許可取得の際の提出書類にも専任技術者の住所の記載欄があります。この住所で毎日通勤可能な場所に住所があるか確認します。

たとえば、東京都の場合通勤可能かどうかの判断にはおおむね2時間程度で移動できるかどうかを目安としています。確認書類としては住民票が用いられます。もしも引っ越し後間もないことや、その他の理由によって現住所と住民票の住所が違うこともあると思います。その場合は、現住所を記載し、その事実が確認できる書類を提出することになります。

賃貸契約書や売買契約書、または公共料金の支払い済み領収書が求められることもあります。このあたりは、実際に申請するときに担当者に確認をとって求められたものを用意してください。各都道府県により求められるものが違う可能性があります。

当該営業所に専属的に従事しているかどうかの確認は健康保険証を用いて行います。法人は必ず社会保険の設置義務があります。社会保険への各社員の加入の条件は正社員とその勤務時間の3/4以上の所定労働時間がある人です。

いずれにせよ、専任技術者として常勤で勤務する人は必ず加入要件に合致すると思います。社会保険については、未加入の営業所も多くみられるという現実もあります。

しかしながら、建設業許可について加入の確認を厳格化することとなりました。このため、加入要件を満たした事業所については未加入のままですと許可を取得できないこととなりそうです。

一方、個人の事業主の場合は従業員の人数によっては社会保険の設置が義務ではない場合もあります。このような場合には、当然専任技術者として勤務する人に健康保険組合の健康保険証はありませんから、国民健康保険証にて対応することになります。

日本の健康保険制度は皆保険制がとられているため、どちらかの保険証が手元にあるはずですので確認してください。国民健康保険証にて確認する場合の注意点があります。健康保険組合の保険証については、事業の名称が記載されていることがほとんどです。

営業所に従事しているかについては、この名称の確認をもって行います。ところが、国民健康保険は市町村が管轄する保険です。おもに個人事業主の人や、社会保険に加入していない人が加入します。この理由により事業所名の記載がありません。このため、常勤性を確認するためには住民税の通知書や確定申告書などを合わせて提出することとなります。

技術者としての要件の確認

専任技術者の技術者としての要件については、次のように確認します。

技術者としての要件を国家資格などで証明する場合には、合格証などで行います。試験の種類によっては、合格証明書ではなくて登録証であったり、免許証や免許証明書で行うものもあります。消防法や電気事業法に基づく資格については免状で行いますので、保有する資格の種類に応じて確認するようにしてください。

実務経験にて証明を行う場合、基本的には証明者から証明印の押印を受けて証明書を作成します。建設業許可を有している場合には、建設業許可書と変更届けの提示で済みます。

一方、建設業許可を有していない証明者による証明の場合には注意が必要です。業種の内容について証明が必要になるからです。業務の内容がわかる契約書や請求書を、実務経験期間を通じて収集する必要があるからです。

しかも、この場合には原本の提示が必要になりますので、証明者の協力がなければ難しいでしょう。もっとも、証明者と疎遠になっている等の理由により証明印やその他の書類の用意が難しい場合においてもあきらめる必要はありません。審査担当と相談のうえ、他の方法を用いることも可能です。

この場合は、本人による自己証明を行います。個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付することになります。また、廃業等の理由により当時の会社が存在しないときには、当時の取締役による証明も可能です。

この場合には、事業が廃業し、会社が精算されているなどして存在しないことを示す必要があります。このために、会社の閉鎖謄本の取得が必要です。この謄本を添付した上で、当時の取締役の個人実印押印により証明することとなります。

4.まとめ

いかがでしたか。建設業の許可取得において専任技術者の確保は重要な問題です。本稿においては、専任技術者について説明してきました。


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