この記事でわかること
- 建設業法に違反していることが発覚する原因とその際の罰則がわかる
- 建設業法違反が発覚した場合の罰則の内容を知ることができる
- 建設業法違反が欠格要件に該当する場合の処分内容を知ることができる
2020年の建設業法の改正があるまで、建設業許可を取得するためにはいくつもの要件を満たす必要がありました。
ただ、いったん建設業許可を取得してしまえば、それで安泰というわけではありません。
何らかの建設業法違反を行ったことが発覚すると、処分を受けることとなってしまうためです。
そこで、どのような理由で建設業法違反が発覚し、どのような罰則を受けることとなるのかを確認していきましょう。
最悪の場合、建設業許可の取消に直結する話ですので、しっかりと問題意識を持っておくようにしましょう。
- 目次
- 建設業法の違反が発覚してしまう理由
- 建設業法に違反したときの罰則の種類
- 建設業法違反が発覚したときの監督処分の種類
- 建設業法違反の発覚は欠格要件に該当する可能性がある
- 建設業法の違反が発覚した事例
- まとめ
建設業法の違反が発覚してしまう理由
建設業法違反をした場合には罰則を受けることとなるのですが、そもそも建設業法違反とはどのようなものがあるのでしょうか。
重大な罪を犯した場合だけが該当するわけではないため、注意が必要です。
刑法に違反した場合
刑法に違反した場合、つまり犯罪行為を行った場合ということです。
犯罪など起こすはずがないと考えているかもしれませんが、絶対にないとは言い切れません。
役員の傷害や暴行といった、比較的軽微な犯罪でも処分の対象となる可能性があります。
身近なトラブルが、建設業許可の取消にまで発展する可能性があるのです。
また、公共工事の入札に不正に関与した場合や、窃盗・詐欺などの犯罪により処分を受ける場合も数多くあります。
定められた金額を超えた契約をした場合
建設業許可には、一般建設業と特定建設業の2種類があります。
下請契約であっても、6000万円を超える契約を行う際は特定建設業許可が必要となります。
しかし、特定建設業許可を取得していないにもかかわらず、その金額を超えた契約をすると処分の対象となります。
また、建設業の業種区分ごとに定められた許可を受けていないにもかかわらず、契約をして処分を受けることもあります。
違反はバレる可能性が非常に高い
上記のケース以外にも、様々な形で建設業法違反が問われる可能性があります。
いずれのケースも、その違反内容はいずれ発覚し、罰則を受けることとなる可能性が高いものばかりです。
建設業法に違反したときの罰則の種類
建設業法に違反するような行為があれば、その業者はペナルティを受けることとなります。
そのうち、刑事裁判としての手続きを通して、裁判所が決定する刑事罰のことを罰則といいます。
建設業法違反により科される罰則と、具体的な違反行為の内容は以下のとおりです。
違反行為の内容により、罰則の内容にも様々なものがあるのです。
3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる場合
建設業許可を受けずに無許可営業をした場合や、特定建設業許可を受けずに下請契約を締結した場合がこの罰則を受けます。
また、営業停止処分や営業禁止処分に違反した場合も該当します。
このほか、虚偽の内容で建設業許可の取得・更新をしたり、不正に建設業許可を取得・更新したりした場合も該当します。
重大な違反行為に対しては、かなり重い罰則が科されるのです。
6か月以下の懲役または100万円以下の罰金となる場合
建設業許可の申請書等に虚偽の内容があった場合、あるいは変更届の提出が必要だったのに提出しなかった場合が該当します。
経営状況分析や経営規模等評価の際に虚偽が記載された申請書を提出した場合もこれに該当します。
また、建設業許可の基準を満たさなくなった場合や欠格事由に該当した場合で、その届出をしなかった時も該当します。
100万円以下の罰金となる場合
主任技術者や監理技術者を置かなかった場合が該当します。
また、経営状況分析や経営規模等評価に際し、求められた報告をしなかったり虚偽の報告をしたりした場合も該当します。
さらに、都道府県知事や中小企業庁長官の立ち入り調査に際して、検査を拒んだりした場合にも、罰金が科されます。
10万円以下の過料となる場合
許可を受けた建設業を廃止してから30日以内に廃業の届けをしなかった場合に該当します。
また、建設業の名称などを記載した標識を掲げなければならないのに、それを怠った場合も該当します。
営業所ごとに備えるべき帳簿を備えていない場合、虚偽の記載をした場合、あるいは帳簿を保存していない場合も該当します。
建設業法違反が発覚したときの監督処分の種類
建設業法違反が発覚した場合に、罰則ではなく監督処分が科されることもあります。
はたして、監督処分にはどのようなものがあるのでしょうか。
指示処分(業務改善命令)
監督処分の中でも、もっとも軽微なものに該当します。
その内容には様々なものがありますが、基本的にうっかりミスの場合や、初めての違反の場合には、指示処分が科されます。
そのうえで重大ではない労災事故が発生したり、主任技術者を置いていなかったりすると、指示処分を受けることとなるのです。
車内への周知や再発防止のための研修が命じられることがあります。
営業停止処分
営業停止処分は、その名のとおり一定期間の営業活動が禁止されるものです。
営業活動ができなければ、売上を上げることはできなくなりますから、非常に重い処分といえます。
うっかりミスであれば指示処分に該当する場合でも、故意や重大な過失により発生した場合は営業停止処分となります。
また、すでに科された指示処分に従わない場合、あるいは指示処分に違反した場合も、営業停止処分となります。
その違反内容は様々であり、違反内容によって営業停止期間も異なります。
もっとも重い処分となるのが談合や贈賄であり、代表者については1年間、ほかの役員は120日間営業停止となります。
そのほか、7日~15日程度の期間となっているものが多くあります。
許可取消処分
許可取消処分に該当すると、建設業許可が取り消されます。
それだけ、重大な違反をしていたということになるのです。
許可取消処分となるのは、許可要件を満たさなくなった場合や、欠格要件に該当した場合があります。
また、不正に建設業許可を取得した場合や、指示処分や営業停止処分に該当し、情状酌量すべき事情がない時も許可取消となります。
役員が傷害事件や暴行事件を起こした場合、道路交通法違反で懲役がついた場合は欠格要件に該当し、建設業許可は取り消されます。
また、脱税行為により法人税法や消費税法違反となり懲役がついた場合も、建設業許可の取消対象となります。
建設業法違反の発覚は欠格要件に該当する可能性がある
建設業法違反により罰金が科された場合、お金を払えばそれで終わりというわけにはいかない場合があります。
建設業許可を取り消されるだけでなく、その後5年間は新たに建設業許可を取得することができない場合があるためです。
「不正な手段により建設業許可を取得した時」と「指示処分や営業停止処分に違反した時」は、すぐに建設業許可を取得できません。
5年間建設業許可がない状態で営業することとなれば、500万円未満の軽微な工事しかできなくなります。
このような状態では、廃業を検討せざるを得ない場合も出てくるでしょう。
建設業法の違反が発覚した事例
それでは、実際にどのような形で建設業者に対する監督処分が科されているのでしょうか。
国土交通省の「建設業者の不正行為等に関する情報交換コラボレーションシステム」に掲載されている情報の一部を見てみましょう。
刑法違反に関するもの
役員が暴行や詐欺などを行い懲役刑が確定すると、建設業許可が取り消されます。
2015年1月から2021年1月までに、このような事例は32件ありました。
また、公共工事の入札に関する不正などにより懲役刑が確定すると、最長で1年の営業停止処分が科されます。
このような事例は同じ期間に42件公表されています。
労働安全衛生法違反に関するもの
建設業者が現場の危険な状況を放置したり、従業員に無理な労働をさせたりすることがあります。
このような場合、労働安全衛生法違反として、罰金刑が科されることがあるのです。
時には大事故につながる場合もあり、非常に多くの処分が行われています。
監督処分としては、指示処分から営業停止まで様々な処分が行われています。
特に処分が重い営業停止処分となったのは、2015年1月から2021年1月までの間に22件あります。
このほか、指示処分なども含めると、同じ期間に386件の処分が行われています。
まとめ
建設業許可を取得する際には、多くの要件をクリアしなければならず、大変に苦労することもあります。
しかし、いったん建設業許可を取得してしまえば、その後の更新はそれほど大変ではないと考えている方もいるのではないでしょうか。
しかし、実際にはその途中で建設業法違反が発覚し、時には建設業許可が取り消されてしまう場合もあるのです。
特に、建設業許可を取得した会社の役員は、会社の行く末に大きく影響を与える存在です。
違反行為をしないようにするとともに、仮に違反してしまった場合には即座に必要な対応をするようにしましょう。